夢吟坊の創業者である神谷 豊はサラリーマンであった。神谷は若い頃から料理が好きで、いつか自分の店を持ちたいと夢見ていた。その為に、調理の専門学校へ行き調理師の免許も取得し、自分の夢に向かって歩んでいたが1つのお店を創るという事は、そう簡単に出来るものではなく、しかたがなく、料理とは関係のない仕事に勤める事にしたのである。自分の店を持つという夢を諦めての決断であった。
 それから十数年が経ち、ある日ひょんな事からうどん職人と知り合いになりその味にひらめいた神谷は、数ヶ月後の平成4年10月に数名の仲間と共に、国道246号線沿いの上馬にカウンター14席の小さなうどん屋をオープンさせた。夢吟坊の第一号店「花背」である。1・2年間は現在の売上の1/4程度というぎりぎりの商いが続いたが、店頭の大ちょうちんや照明の工夫、口こみ、そして運良く雑誌にとりあげられる等により、除々に客数が増えていった。いつしか、行列が出来る店へと発展していったのである。